
■補正予算の目玉の経済対策はバラマキ
政府は11月28日、2025年度の補正予算案を閣議決定した。その額(一般会計の歳出)は、18兆3034億円。前年から4兆円以上増え、不足分をまかなうために新たに赤字国債を11兆6960億円も発行する。
積極財政とはいえ、ありえない「放漫」ぶりだ。
補正予算の目玉はもちろん経済対策。子供1人2万円給付、お米券配布、電気ガス料金補助などが盛り込まれたが、いずれもバラマキだ。給付金、補助金で国民生活は一時的には助かるが、円安が進めば、その効果は吹き飛んでしまう。
なぜ、このような予算案を組むのか? なぜ、誰も高市早苗首相の“暴走”を止めようとしないのか? せっかく誕生した初の女性首相である。的確なアドバイスを送り、軌道を修正させるべきではないのか?
このままでは高市首相は行き詰まり、自滅しかねない。
■「日本版トラスショック」の足音が聞こえる
高市政権が発足して1カ月あまり。ドル円は147円から157円になった。ドルに対してだけではない。円はユーロをはじめとする主要通貨に対して軒並み下落を続けてきた。
これは「円安」と言うより「円弱」であり、こんな予算を執行すれば、「円弱」はさらに進み、インフレ亢進で国民生活は困窮する。
高市首相誕生時、「国債発行を容認する」「金利を上げるのはアホや」などの発言から、市場は「日本版トラスショック」を懸念、警告した。
実際、11月21日に、補正予算の概要が公表されると、10年国債の利回りは2008年6月以来約17年半ぶりの高水準に達し、ドル円も157円台後半と1月中旬以来の安値を付けた。
■円安の主因は投機筋ではなく「資産フライト」
昨年7月、石破内閣時にドル円は161円を記録した。このとき、当時の神田真人財務官は、適宜な判断で、財務省による円買い介入を実施した。それまで2回、財務省は介入を実施して円安を阻止してきたが、その都度、神田財務官は「投機による為替変動は看過しがたい」という主旨のコメントを発して、ドル買い・円売りを牽制した。
しかし、現在の「高市円安」は、投機筋の短期の利益を求める円売りが主因ではない。日本の企業や個人による「資産フライト」(資本逃避)が主因だ。個人に関しては、「新NISA」による米国株及び「S&P500」あるいは「オルカン」などへの投資の急増がある。
■為替介入しても無駄に終わる可能性が高い
円も持っていても目減りするだけなので、「ドル転」して投資することを、いまでは20代のサラリーマン、OLまでやっている。
対外証券投資の統計を見ると、コロナ禍の2年間をのぞいて、ここ10年ほど一貫して黒字を記録している。これは日本から海外へ資金が流出していることを示している。
この黒字は、2024年に「新NISA」がスタートしてから、より一層顕著になっている。
この状況を止め、円の価値を守らない限り、今後は円買い介入をしても、その効果には疑問符が付く。片山さつき財務相は、介入に関して「(選択肢として)当然考えられる」と述べたが、それよりも金利を上げ、これ以上の国債発行を止めるべきではないか。
■2011年「資産フライト」はなぜ起こったのか?
私はかつて『資産フライト』(文春新書)という本を書いた。2011年、あの東日本大震災の年のことだ。当時、ドル円はなんと70円台を記録するなど、いまとなれば信じられないことが起こっていた。なにしろ、民主党政権は円高を阻止するためにドル買いの為替介入をしたくらいである。
それなのに、資産家はもちろん、一般サラリーマンからOLまで、日本円を持ち出して、海外のオフショアの銀行(香港のHSBCなど)に口座を開いて預金するのがブームになっていた。それを「資産フライト」と名付け、各方面に取材したルポが、あの本である。
ではなぜ、「資産フライト」が起こったのか?
それは、日本の先行きに不安があったからだ。経済衰退が続き、それとともに間違いなく円安になる。ならば、いまのうちに外貨(主にドル)に替えておこうという動きである。当時はデフレだったが いまはインフレ。状況はもっと深刻だ。
■持っているだけで目減りする現金と現金預金
日本では長年、個人金融資産の95%以上が円資産で保有されてきた。しかも、その半分以上は、持っているだけで目減りする現金と現金預金である。2025年3月末時点で日本の個人金融資産残高は2195兆円もある。
これが、大きく動きつつある。
『資産フライト』を書いてから4年後、私は、その続編とも言うべき『円安亡国』を書いた。当時、アベノミクスが始まり、日本経済は復活する、「失われた30年」は終わるというムードだったにもかかわらず、円安が進んでいた。2011年に70円台を記録した円は、120円台になっていた。
ドルで見れば日本経済は少しもよくなっていなかった。
それで、私はこの本の最終章に、アベノミクス開始当時の「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記事『アベノミクスの効果、円以外の通貨にも波及—ドイツ銀行が予想』(2013年2月21日)を要約して引用した。
■「積極財政」をやるなら財源は歳出削減に
《日本には15兆ドルの個人金融資産があり、その6割が現預金として眠っている。そして、この銀行預金の大半は、国債に投資されている。しかし、今後、日本のインフレ率が上昇して、現預金の減価が明らかになると、これらの資産は海外資産に向かい出すだろう。
預金者がその5%をシフトするだけで、4000億ドル以上もの資金が流出する。このインパクトは、主にオーストラリアのような高金利国や新興国に波及するだろう。
日本人は向こう何年にもわたって、為替相場を動かす可能性がある。ドイツ銀行は、外国為替市場に「30年に1度」のシフトをもたらすと予測している。》
「積極財政」はあっていい。しかし、やるなら、その財源を歳出削減に求めるべきだ。議員も官僚も何割かリストラし、給料を引き下げ、政府部門を縮小する。行政法人など無駄な税金を使っている組織を解体・縮小する。それらをやらないで、財政規模を拡大するなどしてはいけない。
このままだと、円安が止まらなくなり、国民は塗炭の苦しみを味わうことになる。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/dff313d83cc72230d5c1af41d86ce11c67470b6d
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